はじめに
近年、無人航空機(ドローン)の商用・産業利用が急速に広がりつつあります。それに伴い、飛行ルールや操縦者の技能証明制度も高度化・複雑化しています。とくに注目されるのが「カテゴリー(飛行リスク)」と「レベル(操縦・運航の自立度)」の違いです。
本記事では、国土交通省が定める公式ガイドラインに基づき、以下のポイントを詳しく解説します:
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無人航空機の飛行カテゴリー分類
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操縦レベルの概要とレベル3.5の導入背景
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カテゴリーとレベルの相関関係
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国家資格とレベルの関連
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実務における活用ポイント
これから資格取得やビジネス利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
カテゴリー分類(飛行リスクに応じた区分)
無人航空機の飛行はリスクレベルに応じて、以下の3つのカテゴリーに分類されます。
カテゴリーⅠ:最も低リスクな飛行
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特徴:特定飛行に該当しない
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主なケース:人や建物のない場所での目視内飛行
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手続き:航空法上の飛行許可・承認が不要
カテゴリーⅡ:中リスクの飛行
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特徴:特定飛行に該当。飛行経路下に立入管理措置を講じる
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主なケース:人口密集地区や夜間飛行、目視外飛行など
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手続き:航空法に基づく許可・承認が必要
カテゴリーⅢ:最も高リスクな飛行
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特徴:第三者上空等、飛行経路下に立入管理措置を講じない
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主なケース:市街地上空での自律飛行など
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手続き:厳格な許可・承認と、安全対策が必須
レベル分類(操縦者の技能と運航形態による区分)
無人航空機の運航レベルは、飛行の自律性や操縦者の技能、周囲環境を考慮し、以下の4段階+新たに導入されたレベル3.5に分類されます。
レベル1:目視内操縦飛行
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特徴:操縦者がドローンを直接目視しながら操作
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使用例:ホビー利用、屋外での基本的な飛行練習
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資格要件:不要
レベル2:目視外操縦飛行
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特徴:モニター等を通じた目視外での操縦飛行
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使用例:空撮や農薬散布などでの目視外操作
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資格要件:国土交通省の承認が必要
レベル3:無人地帯での自律飛行
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特徴:第三者が立ち入る可能性の低い無人地帯での自動飛行(フェイルセーフあり)
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使用例:山林での測量、インフラ点検など
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資格要件:技能証明、飛行マニュアル、整備記録などの管理が必要
レベル3.5:無人地帯における立入管理措置の緩和飛行
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特徴:第三者が立ち入る可能性の低い場所において、立入管理措置を緩和した形で補助者なし目視外飛行が可能。
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使用例:物流支援やインフラ点検の効率化、地域限定の運用実証など
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制度的背景:2023年6月より制度化。有人地帯ではなく、あくまで無人地帯を対象に、従来必要だった厳格な立入管理措置を一部緩和し、実運用に近い形での飛行を可能とした。
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資格要件:原則として二等無人航空機操縦士技能証明が必要。飛行マニュアルや訓練記録の整備、安全管理体制が求められる
レベル4:有人地帯での自律飛行(本格運用)
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特徴:都市部や人の多い地域でのドローン自律飛行
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使用例:商用物流・警備・緊急物資の即時配達など
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資格要件:一等無人航空機操縦士の技能証明が必要
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体制要件:機体認証、安全確保計画、フェイルセーフ、自動航行システムなどの完備
カテゴリーとレベルの関係性
レベル | 主な飛行環境 | 想定カテゴリー |
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レベル1 | 見通しの良い開けた場所 | カテゴリーⅠ |
レベル2 | 見通しの効かない範囲での操作 | カテゴリーⅡ |
レベル3 | 無人地帯(第三者が立ち入る可能性の低い場所)での自律飛行 | カテゴリーⅡ |
レベル3.5 | 無人地帯(立入管理措置を緩和した区域)での補助者なし目視外飛行 | カテゴリーⅡ |
レベル4 | 都市部など第三者上空 | カテゴリーⅢ |
資格制度とレベルの紐づけ
国が導入した「無人航空機操縦者技能証明」は、以下のようにレベルと連動しています。
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二等操縦士:レベル2~レベル3.5の飛行に対応
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基本、夜間、目視外などの特定飛行が可能
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一等操縦士:レベル4の飛行を担える
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都市部や第三者上空など、高度な飛行を実施
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これにより、飛行内容に応じて適切な資格・講習を受けることで、安全かつ効率的な飛行が実現できます。
今後の展望と注意点
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レベル3.5は社会実装が進行中:2023年以降、レベル3とレベル4の間に位置づけられる飛行形態として注目され、将来的な制度整備や対象区域の拡大が見込まれています。
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法令遵守の重要性:飛行前には必ず国土交通省の最新資料や飛行マニュアルを確認し、違反行為がないようにする必要があります。
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申請・承認はオンライン化:DIPS2.0システムの利用により、許可承認、登録、技能証明などがオンラインで申請可能です。
まとめ|カテゴリーとレベルを正しく理解し、安全な飛行を
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カテゴリー:飛行のリスクに基づく分類(Ⅰ~Ⅲ)
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レベル:操縦方式と環境に基づく運航形態(1~4、3.5)
これらを理解し、自分の飛行計画に最も適した区分を選ぶことが、ドローン活用の第一歩です。
ドローンは、正しい知識と資格のもとで運用すれば、測量・物流・災害対策・空撮など多彩な可能性を広げてくれるツールです。
最新情報は国土交通省の公式サイトや、垂水ドローンスクールで随時確認しながら、安心・安全に運用を進めていきましょう。
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